近年、新しいヒトの腸炎として世界各地で注目されている疾患。
細菌性下痢症の原因菌としては、赤痢菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、コレラ菌、サルモネラ菌などが代表的なものであるが、このカンピロバクター・ジェジュニイCampylobacter jejuniは微好気性のグラム陰性、彎曲(わんきょく)した桿菌(かんきん)で、元来、ウシの流産の原因菌として獣医学領域で重要視されていたものの同類である。
(1)カンピロバクター腸炎 (2)過敏性腸症候群
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正解
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(1)カンピロバクター腸炎
空腸と回腸に病変があって水様性の下痢が1日に数回から十数回に及び、腹痛、発熱、嘔吐を伴うことがあり、しばしば粘血便もみられる。
下痢は長くて10日間ぐらい持続するので、水分の補給が必要である。
エリスロマイシンなどマクロライド系の抗生物質が著効を示すが、セファロスポリン系薬剤などには耐性を示すので、投薬を誤ると症状の消失が長引く。
なお、集団発生する場合が多く、行政上、食中毒として扱われる。
【参考】
過敏性腸症候群
主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称。
検査を行っても炎症や潰瘍など目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こる。
以前は大腸の機能の異常によって引き起こされる病気ということで「過敏性大腸症候群」と呼ばれていたが、最近では、大腸だけではなく小腸にも関係することなどからこのように呼ばれている。
問題2.次の説明文は何を説明しているか?
いったん発病すると中枢神経が侵されて数日間で死亡する疾患。人獣共通感染症の一つで、恐水病hydrophobiaともよばれ、「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)では4類感染症に分類されている。
(1)狂犬病 (2)風疹
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正解
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(1)狂犬病
日本では従来、イヌのみが狂犬病予防法の対象であったが、1999年(平成11)からネコ、アライグマ、キツネおよびスカンクも輸出入検疫が実施されることになった。
これは日本を含むごく一部の国を除いて、世界各地で現在なおイヌやネコ、その他の野生動物の間で流行がみられ、狂犬病にかかっている病獣による被害者や死亡者が多数報告されているからである。
【参考】
風疹
一般に日本では三日はしかとしても知られる。
風疹にかかった人は免疫ができ、二度とかからないといわれるが、ごくまれに再感染の事例はある。
妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が大きな問題となる。
効果的な治療法は無く、ワクチンによる予防が最も重要である。
問題3.次の説明文は何を説明しているか?
抗毒素など高度に免疫された免疫血清を注射して感染症の治療を行う方法をいう。
ワクチン療法を代表とする能動的免疫療法に対して、受動的免疫療法である。
(1)抗体療法 (2)血清療法
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正解
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(2)血清療法
【参考】
抗体療法
抗体(特定の腫瘍細胞を直接死滅させる作用または免疫系を刺激して腫瘍細胞を死滅させる作用を有する物質)を用いた治療法。
問題4.次の説明文は何を説明しているか?
胎児期または周産期におこる母から子への感染を総称する。
感染経路としては経卵感染、経胎盤感染、産道感染、母乳感染があるが、ヒトの場合はおもに産道感染で、経卵感染の例はまだ知られていない。
(1)水平感染 (2)垂直感染
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正解
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(2)垂直感染
【参考】
水平感染
経胎盤感染や産道感染など胎児期や周産期に母から子へ感染する垂直感染が発見されてから、これに対して一般的な不特定多数の人々の間におこる感染を水平感染とよぶようになった。
問題5.次の説明文は何を説明しているか?
亜急性脊髄視神経障害(subacute myelo-optico-neuropathy)の頭文字をとった病名で、まだ原因不明のときに名づけられたもの。
現在ではキノホルム剤服用による中毒性神経障害とよぶべきものである。
(1)スモン(SMON) (2)サリドマイド
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正解
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(1)スモン(SMON)
昭和30年代の初めころから、日本で多数の患者が発生した原因不明の神経疾患であったが、1970年(昭和45)キノホルム剤服用により生ずる中毒性神経疾患の疑いが濃くなり、キノホルム剤の販売中止とともに患者の発症がみられなくなった。
1972年3月、原因はキノホルム剤服用によるものと結論され、厚生省(現厚生労働省)では特定疾患(難病)の一つとしてその対策が講じられた。
近年における薬害の一つとして重大な反省を迫られる疾患であり、新しい患者の発生はなくなったが、後遺症に悩む多数の患者に対する補償と治療、患者の社会復帰が大きな問題となっている。
【参考】
サリドマイド
サリドマイド (thalidomide) とは、1957年にグリュネンタール社(西独)が開発・発売した睡眠薬の名称である。
サリドマイドは、睡眠薬として即効性があるなど優れた特長を持っていたため、世界各国で販売(米国を除く)されていた。
しかし、サリドマイドを妊婦が飲んだ場合、奇形児(特に上肢の短縮)が生まれる可能性が高いことが分かってきて(レンツ警告、1961年11月)、先進国では直ちに販売中止、そして製品は回収された。
日本国内のサリドマイドは、大日本製薬株式会社(現・大日本住友製薬株式会社)が独自の製法を用いて合成を行い、1958年から販売を開始していた。
しかし、副作用が世界的な社会問題になってから製品の回収を終えるまで、約2年かかっている。 1
964年、全くの偶然から、サリドマイドがハンセン病患者に多発する難治性の皮膚炎(結節性紅斑)に劇的に効くことが確かめられた。
そしてその後、各種の難治性疾患に対する研究が進められた。
そうした中で、1998年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、サリドマイドの販売をついに許可した(1960年前後、不許可のまま)。
日本では、2009年2月、サリドマイドの販売が再開された。
なお、日本での効能・効果は「再発又は難治性の多発性骨髄腫」となっている。
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