2014年07月16日

解糖系について(4)

●解糖系について(4)

●解糖系の過程

段階7: 1,3-ビスホスホグリセリン酸からADPへのリン酸基の転移


報酬期の2番目のステップではホスホグリセリン酸キナーゼ (phosphoglycerate kinase、PGK、EC 2.7.2.3)の触媒により1,3-ビスホスホグリセリン酸からADPへと高エネルギーのリン酸基が転移し、ATPと3-ホスホグリセリン酸 (3-phosphoglycerate)が生成する。

解糖系の2つの基質レベルのリン酸化 (substrate-lebel phosphoryation)の内1つである。

この反応はMg2+を必要とする。段階6のアルデヒドの酸化と段階7のATPの生成は共役して、1,3-ビスホスホグリセリン酸を中間体とするエネルギー共役反応を構成する。

最初のアシルリン酸基の形成反応は吸エルゴン反応で、次のATPの生成は強い発エルゴン反応である。

二つの反応を合計すると以下の式で表すことができる。反応全体では発エルゴン反応である。



段階8: リン酸基の分子内転移

このステップの反応は異性化ではなくムターゼによる分子内転移であることに注意。

グリセリン酸のリン酸基がホスホグリセリン酸ムターゼ (phosphoglycerate mutase、PGM、EC 5.4.2.1)の触媒により可逆的に転移し、2-ホスホグリセリン酸 (2-phosphoglycerate)に変換される。

この反応はMg2+を必要とする。

この反応は2段階で行われるが、反応機構は動物と植物で異なる。

動物では酵素の活性化部位のHis残基が前もってリン酸化されており、それが3-ホスホグリセリン酸のC2位のヒドロキシ基に転移し、中間体2,3-ビスホスホグリセリン酸 (2,3BPGまたは単にBPG)が生成する。

次に2,3BPGのC3位から同じHis残基にリン酸基を転移し、リン酸化された酵素が再生するとともに2-ホスホグリセリン酸が生成する。

ホグリセリン酸ムターゼがまず最初にリン酸化されるためには、2,3-ビスホスホグリセリン酸が必要である。

つまり触媒反応を開始するためには少量の2,3-ビスホスホグリセリン酸が常に細胞内に蓄えられていなくてはならない。


植物では2,3-ビスホスホグリセリン酸中間体を作らない。

まず酵素に3-ホスホグリセリン酸が結合し、活性化部位にリン酸基が転移する。

このリン酸基がC2位に戻されることによって2-ホスホグリセリン酸が生成する。





段階9: 2-ホスホグリセリン酸の脱水

報酬期の4番目のステップでは再び高エネルギーリン酸転移ポテンシャルを有する化合物を生成する。

ホスホピルビン酸ヒドラターゼ (phosphopyruvate hydratase、EC 4.2.1.11)の触媒反応によって2-ホスホグリセリン酸のC2位とC3位からH2Oが可逆的に脱離され、ホスホエノールピルビン酸 (phosphoenolpyruvate、PEP)に変換される。

ピルビン酸が不安定なエノールを固定しているため、リン酸転移ポテンシャルは極めて高い。

参考としてリン酸基加水分解の標準自由エネルギーは、反応物である3-ホスホグリセリン酸がΔG = -17.6 kJ/mol、生成物であるホスホエノールピルビン酸がΔG = -61.9 kJ/mol。

両化合物の保有する総エネルギー量はほぼ同じであるが、脱水反応によってエネルギーの再分布が起こるのである。

この反応を進めるためには2つのMg2+の関与を必要とする。

1つは"コンホメーション性の (conformational)"イオンで基質のカルボキシ基に結合する。

もう1つは"触媒性の (catalytic)"イオンでカルボキシ基とリン酸基に結合する。

2つのイオンが酸化を打ち消し、エノラーゼの活性中心のリシン残基がC-2位の水素原子を引き抜き、エノラーゼのグルタミン酸残基の水素原子と3位のOHとがH2Oを形成する。






段階10: ホスホエノールピルビン酸からADPへのリン酸基の転移

解糖経路最後のステップは、ピルビン酸キナーゼ (pyruvate kinase、EC 2.7.1.40)の触媒によるホスホエノールピルビン酸からADPへのリン酸基の転移であり、ピルビン酸 (pyruvate)とATPが生成する。

この反応にはK+およびMg2+またはMn2+のどちらかが必要である。

第二の基質レベルのリン酸化である。

細胞内の条件では不可逆な反応で、重要な調節点の一つである。

ホスホエノールピルビン酸のリン酸無水結合の加水分解で放出されたエネルギーの約半分 (30.5 kJ/mol)はATPに保存される。

posted by ホーライ at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 体内のエネルギー産出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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