2014年07月17日

解糖系について(4)

●解糖系について(4)


解糖系への供給経路

解糖系の第一段階の基質はグルコースであるから、この回路にグルコースを供給することで解糖系が動きだす。

その供給の一部は糖新生によるが、このほかにもグルコースの供給経路がある。

また、段階1から先の段階へと基質を導入するための経路も存在する。

ここでは、糖新生以外のこれらの供給経路を紹介する。



●グリコーゲン、デンプン

グリコーゲンまたはデンプンからグルコース-6-リン酸を合成する一連の化学反応がある。

動物組織や微生物ではグリコーゲンをグリコーゲンホスホリラーゼ(glycogen phosphorylase)、植物ではデンプンをデンプンホスホリラーゼ(starch phosphorylase)の触媒により供給反応を開始する。

これらの触媒は、グルコース-1-リン酸と、1グルコース単位分だけ短くなったポリマーを生成する。

すなわち、この反応は異化反応である。


グルコースのポリマーは再び酵素により1グルコース単位分ずつ切られていき、分岐点から4グルコース残基を残すところまでこれを繰り返される。

分岐点近くでグリコーゲンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼの活動はいったん停止するが、この後も異化反応は続く。

異化反応の次の段階は、2種類の酵素の動きを止めている分岐を除去することだ。

この作業は脱分岐酵素(debranching enzyme)によって二段階で進む。

脱分岐酵素は最終的に分岐点から伸びているのグルコースの「枝」のうちの一本をポリマーの非還元末端に転移させる。

分岐を失ったポリマーを再びグリコーゲンホスホリラーゼまたはデンプンホスホリラーゼが異化していく。

こうして、いくつも生み出されたグルコース-1リン酸は、ホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase)の触媒によりグルコース-6-リン酸となる。

これは可逆反応だ。

グルコース-6-リン酸は解糖系の1段階やペントースリン酸経路へと供給される。




●食餌中の栄養素

人の消化器系において、食餌中の多糖や二糖を解糖系で消費するための糖へと変換するプロセスがある。

ほとんどの場合、食餌中の糖の供給源はデンプンである。

デンプンの消化は口の中で始まる。

まず、口腔に分泌される唾液に含まれるα-アミラーゼによりデンプンは長鎖の断片またはオリゴ糖に分解される。

つづいて、食物が唾液とともに胃の中へと落ちるが、ここでα-アミラーゼはpHが低いため不活性化されてしまう。

次の消化は膵臓から小腸に分泌された別のα-アミラーゼにより行われる。

膵臓のα-アミラーゼは主にマルトースやマルトトリオース、限界デキストリン、あるいはα(1→6)分岐点を含むアミロペクチンの断片を生む。

このうち、マルトースとデキストリンはそれぞれ小腸の刷子縁膜に付着している酵素マルターゼ、デキストリナーゼにより単糖へと分解される。

デキストリン + nH2O → nD-グルコースマルターゼ + H2O → 2 D-グルコース



栄養は小腸の細胞に吸収されなければ解糖系などで活躍できない。

そのため、デンプンから最終的にD-グルコースに獲得する酵素が小腸に存在する。

デンプン以外の栄養素から由来する他の二糖ラクトース、スクロース、トレハロースも、単糖へと分解する酵素反応は小腸の表面で行われる。

それぞれの酵素はラクターゼ、スクラーゼ、トレハラーゼ。

ラクトース + H2O → D-ガラクトース + D-グルコーススクロース + H2O → D-フルクトース + D-グルコーストレハロース + H2O → 2 D-グルコース


これらの単糖は、体中の細胞の中で解糖系の準備期のそれぞれの段階に導入される。

この導入のためにATPを1当量必要とする、それぞれ異なる酵素反応を受ける。

D-グルコースはヘキソキナーゼの触媒によりグルコース-6-リン酸となり、段階1に導入される。

D-フルクトースもヘキソキナーゼの触媒を受けるが、こちらは段階2の基質であるフルクトース-6-リン酸となる。D-ガラクトースはさまざまな反応を経て段階1の供給に利用される。

食餌中のグリコーゲンもデンプンと非常によく似た構造をしており、その消化経路は同じ。


posted by ホーライ at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 体内のエネルギー産出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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