狭心症(きょうしんしょう、angina pectoris)とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈の異常(動脈硬化、攣縮など)による一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫感などの主症状である。
虚血性心疾患の1つである。
なお、完全に冠動脈が閉塞、または著しい狭窄が起こり、心筋が壊死してしまった場合には心筋梗塞という。
●狭心症分類
発症の誘因による分類
労作性狭心症(angina of effort):体を動かした時に症状が出る狭心症。
安静時狭心症(angina at rest):安静時に症状が出る狭心症。
発症機序による分類
器質性狭心症:冠動脈の狭窄による虚血。
微小血管狭心症:心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮による虚血。
患者の男女比が大きく、中でも更年期の女性に多く見られる症状で女性の場合は閉経により血管拡張作用を持つエストロゲンが減少することにより引き起こされる。
1980年代になってようやく発見された。
冠攣縮性狭心症(vasospastic angina):冠動脈の攣縮(spasm)が原因の虚血。
異型狭心症:冠攣縮性狭心症のうち心電図でST波が上昇している場合。
臨床経過による分類(AHA分類、1975年)
安定狭心症:最近3週間の症状や発作が安定化している狭心症。
不安定狭心症(unstable angina):症状が最近3週間以内に発症した場合や発作が増悪している狭心症。
薬の効き方が悪くなった場合も含まれる。
心筋梗塞に移行しやすく注意が必要である。
近年では急性冠症候群;Acute coronary syndromeという概念がこれに近い。
●狭心症の原因
一般的に狭心症は心臓の冠動脈にプラークという固まりができ、血液の通り道を狭くすることによって起こるもの。
誘因としては高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症、ストレス、性格などが考えられる。
冠攣縮型(異型)狭心症は、心臓の血管そのものが異常収縮をきたし、極度に狭くなってしまうために起こる。
微小血管狭心症は、心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮によって起こるもの。
誘因としては閉経、喫煙などが考えられる。
●狭心症の症状
狭心痛(締め付けられるような痛み;絞扼感や圧迫感)が主症状である。
痛みは前胸部が最も多いが他の部位にも生じる事がある(心窩部から、頸部や左肩へ向かう放散痛など)。
発作は大体15分以内には消失する。他に動悸・不整脈、呼吸困難、頭痛、嘔吐など。
症状を放置した場合、心筋梗塞、心室細動などを引き起こす場合がある。
●狭心症の検査
心電図:一般的にはST低下(下降)がみられる。
ホルター心電図:小型の心電図記録装置を24時間携帯し、検査を行う
運動負荷心電図:労作性狭心症では運動負荷で心電図に変化がみられる。
心筋血流シンチグラフィ:人工的に作られた放射性同位体(RI)を使用する。
使用されるのは、201Tlや99mTcである。特定の施設でしか施行できない。
冠動脈造影(coronary angiography:CAG)
血液検査:白血球、CRP、CK、CKアイソザイム、AST、LDHなどは心筋梗塞や不安定狭心症での鑑別に有用。
ペントラキシン(PTX3):炎症性蛋白であるが血管内皮で産生されており、血栓症と強い相関がある。心筋梗塞へ移行しつつある不安定狭心症の診断に有用と考えられている。