●アスピリン喘息とはどんな病気か
喘息、アスピリン過敏、鼻茸(はなたけ)を3主徴とする病気です。
喘息の患者さんの約40%が副鼻腔炎を合併していて、副鼻腔炎の患者さんの約20%は喘息を合併しています。
喘息を合併している副鼻腔炎患者さんは近年増加傾向にあります。
喘息を合併している副鼻腔炎は合併していない副鼻腔炎に比べて非常に難治性です。
喘息を合併している副鼻腔炎患者さんの約4分の1がアスピリン喘息であるといわれています。
30歳以降に発症することが多く、喘息発作は通年性、重症型でステロイド依存性であることが多いです。
*鼻茸とは
副鼻腔粘膜(ふくびくうねんまく)または鼻腔粘膜から生じる炎症性増殖性の腫瘤で、形は、茎を有する洋梨状、釣り鐘状で、みずみずしく浮腫状のものから、発赤があるもの、線維性のものなど、多種多様です。
また、単房性のもの、多房性のもの、鼻腔内を充満するもの、さらには後鼻孔(こうびこう)方向に発育する後鼻孔鼻茸もあります。
鼻ポリープとも呼ばれています。
●原因は何か
原因はよくわかっていませんが、おそらく患者さんの下気道では、アラキドン酸代謝経路が非ステロイド性消炎鎮痛薬によって過剰に阻害されるためと考えられています。
●症状の現れ方
アスピリン(アセチルサリチル酸)などの非ステロイド性消炎鎮痛薬の投与により、アナフィラキシー様の症状(呼吸困難、血圧低下など)とともに、気管のれん縮が起こり、重い喘息発作から死に至ることもあります。
非ステロイド性消炎鎮痛薬は、市販されている薬剤(セデス、ノーシン、バファリンなど)にも含まれているため、これをのんだあと、喘息発作が起きたかどうかが重要です。
また、カレーやミントなどの香辛料、食品中の色素、添加物にも過敏性をもちます。
喘息の患者さんで、鼻づまりと嗅覚障害(においが鈍い)の症状があれば、鼻茸の合併が考えられるのでアスピリン喘息を疑います。
●検査と診断
アスピリン喘息の診断では、詳細な問診が最も大切です。
つまり、過去に非ステロイド性消炎鎮痛薬の服用により、明らかに喘息発作が誘発されたことがあるかどうかを確認することです。
また近年、アスピリンあるいは他の非ステロイド性消炎鎮痛薬による負荷試験も行われています。
これには、内服法、吸入法、舌下内服法などがありますが、誘発される症状は非常に多様で、1秒率(1秒間に吐き出された空気の量が肺活量に占める割合)の低下、発疹、眼瞼浮腫(がんけんふしゅ)、遅発型喘息、大発作などが生じるため、呼吸器科医の厳重な管理のもとに行われます。
副鼻腔炎、とくに鼻茸の合併は高率です。
鼻茸は通常みずみずしく多房性で、鼻腔に充満しているほど高度です。
上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)のみならず、全洞に陰影をみる汎(はん)副鼻腔炎を併発していることが少なくありません。
鼻汁(びじゅう)は通常水様性ですが、感染を合併していれば粘膿性(ねんのうせい)になります。
嗅覚障害は鼻症状のなかでもいちばんがんこで治りにくい症状です。
嗅覚障害の有無が副鼻腔炎合併の有無、病態の増悪の指標のひとつになります。
●治療の方法
アスピリン喘息に対する治療の中心はステロイド薬になります。
病態が軽症な患者さんは全身的に影響の少ないステロイドスプレーの鼻への噴霧、ステロイド液の点鼻などの局所投与で鼻症状のコントロールがつく場合もありますが、病態が重症な患者さんはステロイド薬の全身投与が必要になる場合もあります。
また、鼻の治療とともに喘息のコントロールが非常に重要です。
内科の先生への通院・治療が必要になります。
外科的手術としては、内視鏡下に鼻・副鼻腔手術を行い、鼻茸を始めとする病的粘膜の除去、鼻腔・副鼻腔の換気ルートを確保することが大切になります。
ただし手術をして病気が根本的に治るわけではないので、手術後も引き続き根気よく治療を続けることが大切です。
アスピリン喘息の患者さんはさまざまな薬物に対して過敏症があるため、手術に際しては慎重な対応が必要です。
●アスピリン喘息に気づいたらどうする
喘息があり、種々の薬剤や食品、添加物に過敏性がある場合、鼻づまりや嗅覚障害といった鼻の症状がある場合はアスピリン喘息が疑われます。
さらに中耳炎を合併することもあるので、内科の担当医に相談しましょう。
耳鼻咽喉科医の診察も必要になります。
以上