●細胞について(2)
●原核細胞と真核細胞
細胞はその内部構造から原核細胞と真核細胞に分けられる。
これらの最も大きな差異は細胞核の有無であり、原核細胞には細胞核がない。
原核細胞には真正細菌と古細菌が含まれ、真核細胞は真核生物が含まれる。
また、原核細胞から構成される生物をまとめて原核生物と呼ぶ。
これら3 種類の生物群はドメインと呼ばれる最も上位の分類群で、古細菌と真核生物が近く、真正細菌が離れている。
原核細胞は真核細胞に比べ、細胞膜の中に懸濁したリボソームがあるだけの単純な構造を持つ。
原核細胞は単細胞生物や群体をなす生物に限定して見ることができ、五界説のモネラ界が相当する。
真核細胞は、その細胞膜の内側に細胞小器官を有する。
ミトコンドリアと葉緑体は細胞に取り込まれた真正細菌が共生したものに由来すると考えられている(細胞内共生説)。
単細胞の真核生物は非常に多様な種類があるが、群体や多細胞生物の種類も多い(多細胞生物の中に含まれる界である動物界、植物界、真菌は全て真核細胞生物である)。
なお、原核細胞を裸核細胞、真核細胞を被核細胞と呼ぶこともある。
●原核細胞
原核細胞は単純な組織を持ち、細胞を持つ生物の初期の形態を維持していると考えられる。
最大の特徴はDNAを含む核様体が膜の区切りが無く細胞質の中に漂っている事と、一般に単位膜で包まれた細胞小器官を持たない事である。
DNA は環状で、その一端が細胞膜の決まった箇所に付着している。
リボソームは細胞質中に浮遊したもの(遊離リボソーム)と、細胞膜に付着したもの(膜リボソーム)があるため細胞質気質はザラザラしている。
なお原核細胞のリボソームは真核細胞のそれよりやや小さい。
細胞膜は脂質二重層であり、その外側にモリクテス綱とテルモプラズマ綱を除くと細胞壁を持ち細胞内と外界とを隔てている。
エンドサイトーシスやミトコンドリアを持たない原核生物にとって、ここは電子伝達系を始めとした代謝の主要な場であり、盛んに内外との物質のやり取り、エネルギー生産などを行っている。
原核生物にとって細胞膜の機能は大変に重要であり、体積に対してある程度の表面積を確保する必要がある。
これが原核生物が細胞サイズをあまり拡大できない理由の一つといえる。
また細胞壁の存在は、低張液などの条件下での浸透圧による細胞の破裂を防止する。
原核藻類(シアノバクテリアなど)は光合成を行う機能を持つ。
この他目立つ構造に、鞭毛や線毛または莢膜や粘膜層を持つものがある。
鞭毛はアクチン様タンパク質フラジェリンの螺旋様多重合体であり、これが細胞壁から突き出して回転し、能動的に移動することができる。
線毛はタンパク質の繊維で、病原体などが他者へ付着することを容易にする。
水を多く含み細胞を取り巻く莢膜や粘膜層は、食作用を受けにくくさせる効果がある。
真正細菌と古細菌を比較した場合、鞭毛や細胞壁は細菌や古細菌がそれぞれ独立に持つものであり、目的は同じでも両者の構造に共通点はない。
また、古細菌の遺伝子発現やタンパク質合成系は真正細菌よりもむしろ真核生物に似ている(ただしDNA が細胞質中に存在するなど原核生物の基本的な性質は保存している)。
古細菌のエーテル型脂質、特にその立体構造の違いは両者を決定的に区別するが、これは真正細菌と古細菌の違いというより、むしろ古細菌とその他の生物を区別する特徴である。
原核細胞の生理は機能化が進んだ真核生物よりも多様である。
発見された数千種に過ぎない原核生物には、真核生物が成しえない硫黄からエネルギーを得るものや、空中窒素固定を可能にするものも存在する。
●真核細胞
真核細胞は原核生物よりも一般に大きく、数種類の細胞小器官を持つなど複雑な構造をしている。
細胞質の基質は原核細胞と違ってざらざらしていない。
これはリボソームの主要な部分が小胞体に結合しているためである。
真核細胞の細胞質には細胞骨格(サイトスケルトン)と呼ばれる微小な管やフィラメント状がつくる網目もしくは束状をした3次元構造がある。
これが特に発達した動物の細胞では、細胞骨格が各細胞の形を決定づける。
植物の場合、細胞の形は細胞壁による影響が大きいが、細胞骨格が原形質の流動を制御する。
細胞小器官はこの細胞骨格に定着しており、浮遊状態には無い。
細胞骨格は細胞質フィラメントと呼ばれる3種類のタンパク質からなる繊維に分けられる。
また、細胞質フィラメントは骨格的機能だけでなく、分泌や情報の伝達、また運動にも機能すると推定されている。
細胞膜は、原核細胞と構成は少々異なる部分もあるが、機能はほぼ同じである。
真核細胞では、細胞壁があるものもあれば、無いものもある。
真核細胞のDNA は、一本または複数本の分子から構成される直線状で原核生物よりも多く、染色体と呼ばれる。
染色体は、DNA がヒストンという塩基性タンパク質に絡みついた複合体(ヌクレオソーム)を構成してしっかりと凝縮した状態になっている。
全ての染色体のDNA は核の中に閉じ込められており、核膜によって細胞質と隔てられている。
何種類かの細胞内小器官は、それぞれが独自のDNA を持つものがある。
それらは大きさがほぼ細菌に近い事もあり、元々は別の生物だったものが共生によって細胞小器官となったとする考えを細胞内共生説という。
真核細胞生物の中には、繊毛や鞭毛で移動できるものがある。
鞭毛は原核生物のものとは構造が異なり、まったく違った性格のものであり、細胞骨格の一種である微小管がタンパク質繊維で結びついたものである。